その!:陶器編のあと、コロナウィルス感染の世界的状況に飲み込まれ、まさかの事態に・・・
この経済的打撃は計り知れず。民芸の職人さんたちが案じられます。
陶器と同じく、ナブールはい草の織物でも有名。元々はモスクでの礼拝に使うゴザを作っていたのをバッグなどに転用したり、形を変えて発展してきました。
女性しか織らないキリムとは逆で、い草は男性の仕事。キリムは各家庭での内需ですが、い草製品はモスクでの必要品として、その生産が職業として発展してきた経緯がここにも伺えます。
ナブールの目抜き通りに軒を連ねて目立つ陶器屋さんにくらべて、い草織りの職人さんたちは表通りから一本も二本も裏通りへ、何度か曲がって入り込んだ奥で、ひっそりと作業していらっしゃいました。
入り口近くでは、材料のい草の選り分けなど、準備をしています。
表面がつるつるしていてもそれなりの硬さと長さ、よくないものをより分けたり揃えたりするのもなかなか手間がかかります。
奥では、機織り機を展開して床一面に広げたような形での織りの作業。
建物は古く、だだっ広く、冷暖房設備も見当たらない・・・ラジオでコーランやニュースを聞きながら、一日中こうして座って作業するのは立ち仕事とはまた違った体の負担がありそうです。硬いい草をピンと張った縦糸(それも太い)に通し、締める、の繰り返し。どこの工房覗いて見ても、年季の入った職人さんが多く見受けられました。
ダールヤスミン で案内しているとおり、柄や模様、文字などを織り込むための、色を染めたい草も。
出来上がったものばかり目にしていると、綺麗にできているのが当たり前、と思ってしまいがちですが、こうして実際に織っているところを目にすると、背景や時の流れ、ご苦労がひしひしと伝わってきます。
全世界的に難しい状況に陥ってしまいましたが、この伝統の技術が次の世代にも伝わって、生産が続けられること、この職人さん方がお元気で働き続けられていくことを願ってやみません。
賑やかな表通りからはかけ離れた、住宅が並ぶ静かな路地。古い町並みの中の、さらに奥まった工房の空間は、なんだかタイムスリップでもしたかのような味わいがありました。


おネコさまが堂々と使用中。
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