砂漠の鹿、ガゼルは・・・
ガゼルGazelle はもともとアラビア語の ghazăl ( غزال) からきていましてフランス語のスペルをもらい、17世紀ごろにはそのまま英語になり日本語も英語のカタカナ読みです。北アフリカとアジアに生息している、とても速く走れる鹿、というのがわかりやすい説明でしょう(下に本物のガゼル君の写真を掲載しました)。もっとも小さい種類のものは背丈53cm、アルジェリア、エジプト、スーダンで見られます。長い間水を飲まずに走れるので、乾いた場所でも生きのびれるのですね。
さてさて。チュニスにいると、「ああ僕の『花』よ(ノワーラ、ザハラ、ハネーナ)・・・お茶をくれ」「ああ僕の花よ、この予約はどうなった」とか何かにつけどんな若い女性でもいわれるものですが、「君は僕のガゼルだよ、じゃあ、日本にいったら電話を買ってきて」とかいう人もいます。頼みごとしない場合ももちろんあるんですが・・・。「ほう、私はガゼルですか?」と応えると、そうだよ君はすんばらしいガゼルだと、いわれます。
「鹿、ガゼル・・」?
きいてみると、アラブ文化圏ではどうやら女性の美、エレガンスさ、優美さの象徴を「ガゼル」と喩え、「君はガゼルさ」といわれると断然ほめ言葉なんですよね。砂漠やサバンナのスピードランナー(すなわち私はまたパシリ?とまで深く考えてみる)としてもよく知られますが、女性にいっている場合は「よく走り回る人」というわけではないようです。多くのアラビア語の恋物語の詩には「ガゼル」「ガゼル」が連呼されます。また、おもしろい話があり、イスラム教のカリフのひとりアブデルマリック(646-705)さんは捕まえたガゼルを逃がしたとのこと。恋人に似てたからですって。うーん、鹿みたいな顔の女性そんなにいたっけ?ほかにも「自由」(広いところを走り回ってるから)、「速さ」「活発さ」「鋭さ」などの象徴でもあり、それはその国や民族文化によりけりです。アジアの国々でガゼルが何を象徴するか、もまた異なることでしょう。
またチュニジアの国営航空会社、チュニスエアーのマークもガゼルです。美とスピードでしょうか?しかし、ガゼルは持久力はあまりないようで長い時間を走ることはできません・・・そんなところがぴったり?!(くすっ。現地ではチュニスエアーにやられっぱなし)
こちらはチュニジアが誇るローマモザイク、なんとローマ人もガゼルを描いています。紀元後2世紀のもの
話はかわって、チュニジアのタタウィンには「ガゼルの角corn de gazelle」という激甘でヘビーな揚げ菓子があります。大学芋を蜂蜜づけにしたような味・・だけど初心者は胃にもたれる。
このお菓子、美しくてエレガントなガゼルさんの角の形どったそうですが、見た目には「うん◎」にそっくりです。
最後に宣伝。お店ではガゼルモチーフのちびキリム、中型キリムございます。ここまで読んでくれた方はガゼルのキリムかいたくなりません?