わたくしは・・・・年間を通して強烈なミッションを受けがちです。困った日本人をTunisの家に迎え入れてしまい、1か月疲れるというのは年に数回あります。(1日中サングラスかけていて、呪われるとつぶやき続けるおじさんとか)
断れない。しょうもないだろうなぁ、と感じてもどこかなにか面白いかもしれない、なにか光があるかもしれない。。。で3週間たち、あーしょうもなかったなぁ。
さて、チュニジアは2011年の「革命」後方向性を失う混迷期を迎えました。もともと独裁RCD一党政治だったようなものが、60党一気につくられ、ラジオ局があちこちで開局、テレビ局も10以上に。言論の自由はばんざーい
亡命していたガンヌーシがイギリスから戻り、ナハダ党をつくり「いったんよいイスラーム国家をつくりましょう、イスラームにもどろうよ」といったプロパガンダで庶民の人気を勢いよく集め、モスク、モスクのイマームとモスクにかかわる人の声が強くなり、、
いまから思えば誰もがアホやんと感じる説法があちこちで繰り広げられました
短くいうと「われらはイスラーム、アッラーの元聖戦にきましょう、シリアへ!!ダアアアアーシュ!!!(わたしひとりのダジャレ、シリアイラクのISISにいくこと、ジハディスト聖戦に参加することを 人々はダアシュDaesh といいます)
頭の中が純白の青年たち18-28歳がリクルーターみたいな人に洗脳されたか、感化されたかで、2011年革命後から3年でたしか6000人がトルコからシリアにはいり戦闘員になったといわれていまして、そりゃもちろんそこで亡くなる人もいますが、その現地で結婚し、子供をつくりどんどん・・・戻ってきているのがこの1年であるそうです。
そのころ本物のテロか、意味不明の自爆テロとか、テロ予告声明とか、あちこちでおこり
チュニジアから一気に観光客が大激減。極めつけに、2015年は観光客襲撃テロ相次ぎ、3月は日本人3人も亡くなるバルドー博物館襲撃事件。。。。
もちろん当時に班長格の青年は「イスラームXXXX軍」というようなグループをつくり、
各地方でポコポコそのようなグループが発足、あるグループは武器をつくれたり、ダアシュにいくインストラクション、戦闘員特訓などをしたそうですが、、、
今は2024年、ダアシュに行く青年もほぼいなくなり(まだ南部の村々ではいるそうです、それほど生活が無味乾燥で、経済基盤もなく・・・ダアシュにいったほうがまだマシと思う青年がいるのでは??)でも、この5-6年でハラカ(脱国、イタリアのランペドーサ島)は安定の数字、いずれにせよ青年たちは出たい。おっさんも出たい、出たくない人はいない? ・・とタクシーの運ちゃんたちはいう。
話を戻して、わたくしの文化人類学者の友人のひとりアリッサは、
ダアシュでシリアからもどってきた家族の調査もしており、2024年の4月、すんごいいいネタをみつけました。リビア国境沿いのベンガルデンの町のフェス(2016年、リビアに潜伏していたダアシュの一部がベンガルデンに侵攻、この町の人たちが戦って勝った勝利のフェス、強烈)
そのベンガルデンのフェスに突然参加、青年の家でコーディネーターをしていた青年 ナビル(仮名)とインタビューに成功、お兄さんがダアシュにいってあちらで殉死。さらにそのお兄さんは2011年前後からイスラミックグループをつくって活動していたという、班長格。シリアのダアシュとの連絡係もばっちり。2024年の今、ダアシュ関係者は国からひっくるめてテロリストということになり、そのナビル君はテロリストの家族ということで電話は当局に盗聴され、まともな仕事につくことは一生不可能だそうです。
今後、アリッサはナビルと業務提携を結び、さらに調査がすすめられそうなkeyperson、コーディネーター をみつけたとベンガルデンから狂喜乱舞して家に戻ってきたアリッサでした、が・・・・アリッサがいったんドイツ(ドイツの北アフリカ研究機関に所属)にかえる前の日に、ナビルが一発電話をよこしました。
「電気代滞納で家に電気がない、2000TND」「いまいう?」
ナビルがアリッサに話した内容では6畳一間くらいの家に奥様と3人の子供、
奥さんとFACEBOOKで知り合って結婚(無職の人が、テロリストの家族がそんな結婚できるのか?)、まともな稼ぎがほとんどないまま子育てしている。
この日から、ドイツにもどったアリッサは非常に気を付けながら数週間にわたり私に連絡をよこし
「お金は絶対送金できない、テロリストに加担していると当局に知られると、二度とチュニジアに入国できないわ」
「犠牲祭前に電気代の援助、あのナビルとのつながりは壊したくないでしょう、貧困も問題を激しくかかえた家庭に300EUROくらいあげてもいいのでは」とわたし
「ともこならどれくらい援助する?」
「嘘かほんとか、電気代2000TND滞納というのは信じられないけど、とにかく貧しいなら、彼のネタが本当にネタになるなら1000TNDくらい援助すると思う
彼のネタでアリッサがいい論文ページかけるなら1000TNDはおいしくないだろう」
・・・ということではじめの1週くらいは ほとんどどれくらい援助するかの金額の話になり、次の1週は・・・結局わたしがナビルに南部の町で手渡しする話になりました。
自分でもいうのもなんですが、こんなにめんどくさい、用心深い夫がきくと半狂乱になるようなわけのわからないミッションを受けるものです。
そして4月のある日、中学生の息子の情操教育の一環で南部に弾丸でいくことになり、
その青年ナビルとガベスの町のルアージュステーションで待ち合わせ
生現金を渡したのでありました。その時にアリッサにいわれたこと、
絶対FBなどでメッセージのやりとりをしてはならない、当局に読まれるから。
whatsupで音声だけで対話すること。普通の一般電話回線もだめ、当局に知られるから。
文化人類学者は結局現場のことをネタにして論文を書きます。社会問題、貧困問題を目の当たりにする。インタビューさせてもらう家族がどれだけまずしいかも体感します。たくさんのお土産、その家族の子供たちへの教育支援、長い目でしてあげたらと心底思います。一生付き合うつもりで。
考古学研究者もしかり。世界のどこかで発掘して論文かくならば、そこの遺跡の健全な保存活動に絶対力とお金をつくすべき。行って、発掘して、論文かいてさようならが圧倒的すぎで先進国人の途上国搾取。